日本では古くからヤモリを「家守」と書き家の繁栄や安全の象徴として大切にしてきました。特に白いヤモリやアルビノの個体は金運アップの予兆とされ宝くじが当たる前触れなどと言われることもあります。一方でそのヤモリが主食としているのは私たち人間が最も嫌う害虫の代表格であるゴキブリです。ここに非常に興味深い逆説的な関係性が生まれます。つまり「ヤモリがいる家は縁起が良い」とされる一方で「ヤモリがいる家にはゴキブリもいる」という現実があるのです。スピリチュアルな観点から見れば生き物が集まる家は「気」が良い場所であり生命力に溢れていると解釈されます。廃墟や人が住まない家は急速に劣化しますが人が住み適度な温度と湿度が保たれている家は虫たちにとっても居心地が良い場所なのです。かつての日本家屋は隙間が多く自然と共生する構造だったためヤモリが天井裏を走る音は日常の一部でした。しかし現代の高気密高断熱住宅においては虫一匹の侵入も許されないという潔癖な価値観が主流となりつつあります。このギャップが「縁起が良いはずなのに不快」という葛藤を生む原因となっています。しかし視点を変えてみましょう。ヤモリがゴキブリを食べるという行為は穢れを浄化する作用とも捉えられます。家の中に潜むネガティブな存在(害虫)をポジティブな存在(守り神)が処理してくれていると考えればヤモリへの見方も変わるかもしれません。実際にヤモリは非常に臆病で人間に危害を加えることはありません。毒もなく噛みつくことも滅多になくただひたすらに害虫を食べて生きています。嫌われ者のゴキブリを糧にして家の守り神として崇められるヤモリ。この奇妙な食物連鎖と人間社会での評価の対比は自然界の面白さを物語っています。もし窓辺でヤモリを見かけたら「ゴキブリがいるのか」と嘆くのではなく「悪いものを食べてくれているのだな」と感謝の気持ちを持つことで少しだけ心穏やかに過ごせるかもしれません。縁起物としての地位は伊達ではなく彼らは実利を兼ね備えた守護者なのです。