庭の落ち葉を片付けている時や、森の散策中に、小豆ほどの小さな体に、まるで針金のように異常に細長い足がついた、蜘蛛のような生き物がひょこひょこと歩いているのを見かけて驚くことがありますが、その多くはザトムシと呼ばれる生き物であり、彼らは蜘蛛と同じクモ形類に属してはいるものの、蜘蛛とは決定的な違いを持つ全く別のグループの生物です。ザトムシの最大の特徴は、その足の長さもさることながら、頭胸部と腹部が一体化してくびれのない楕円形の体を成している点にあり、これにより腰のくびれを持つ蜘蛛とは一目で見分けることができますが、英語では「あしながおじさん」を意味する「ダディ・ロング・レッグス」という愛称で親しまれ、欧米の子供たちにとっては馴染み深い遊び相手でもあります。生物学的に興味深いのは、ザトムシは蜘蛛のように糸を出すことができず、網を張って獲物を待つことは一切なく、また毒腺も持っていないため、人間を噛んだり毒を与えたりする心配が皆無な「完全な無害生物」であるという事実であり、彼らはその長い足を触角のように使って周囲の状況を察知しながら、小さな昆虫の死骸やキノコ、落ちた果実などを食べる、自然界の「掃除屋」としての役割を担っています。また、ザトムシの足には驚くべき生存戦略が隠されており、天敵に襲われた際に自ら足を切り離して逃げる「自切」という行動をとりますが、切り離された足はしばらくの間ピクピクと動き続け、捕食者の注意を自分から逸らすデコイの役割を果たします。しかし、切り離された足は蜘蛛やトカゲのように再生することはないため、足を失うことは彼らにとって文字通りの命懸けの代償であり、私たちが不用意に触れて足を奪ってしまうことは、彼らの寿命を著しく縮めることに繋がります。ザトムシは湿った暗い場所を好み、日本の森林や公園の茂みに多く生息していますが、家の中に侵入してくることは稀であり、万が一迷い込んできたとしても、室内では繁殖することも汚れを残すこともありません。彼らのその独特なフォルムは、数億年前の化石からも発見されており、恐竜が誕生する遥か以前から、その細い足で大地を歩み続けてきたという、進化の驚異を体現している生きた化石でもあるのです。私たちがザトムシを見たときに感じる「足が長い蜘蛛への不気味さ」は、実は私たちの無知が生み出した偏見に過ぎず、その正体を知れば、毒もなく糸も吐かず、ただひたすらに森の平和を守りながら歩き続ける彼らの姿には、ある種のストイックな気高さすら感じられるはずです。足が長い蜘蛛に似たこの奇妙な隣人を、次に庭で見かけたときは、その繊細な足が織りなす不思議なステップをじっくりと観察し、自然界が作り上げた多様なデザインの奥深さに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。その一瞬の出会いが、あなたの生物学的な好奇心を刺激し、ありふれた日常の景色を一段と鮮やかに彩ってくれることでしょう。