浴室やキッチンで飛んでいる、小さな黒い虫。その姿を見て、私たちはつい反射的に「チョウバエだ」と決めつけてしまいがちです。しかし、実は鈴鹿市にあるゴミ屋敷や私たちの家庭の水回りには、チョウバエと非常によく似た、別の種類のコバエが発生していることが少なくありません。その正体を見誤ると、せっかくの対策が的外れなものになってしまう可能性もあります。正しい駆除を行うためには、まず敵の正体を正確に知ることが重要です。チョウバエと最もよく混同されるのが、「キノコバエ」の仲間です。キノコバエは、体長二ミリ程度の、黒っぽく、蚊をさらに華奢にしたような、細長い体型をしています。彼らは、その名の通り、キノコや腐葉土などの、腐敗した植物質から発生します。家庭内では、観葉植物の土や、日当たりの悪い場所に置かれたプランターの土が、腐葉土化して湿っていると、そこが格好の発生源となります。また、キッチンシンクの排水口に溜まった野菜クズなども、彼らの繁殖拠点となり得ます。チョウバEが排水管内部の「ヘドロ」を好むのに対し、キノコバエは「腐った植物」を好む、という食性の違いがあります。もし、観葉植物の周りで特に多く飛んでいるようであれば、キノコバエの可能性が高いです。次に、これもまた厄介なのが「ノミバエ」です。体長二ミリ程度で、背中が丸みを帯び、すばしっこく歩き回るのが特徴です。危険を感じると、飛ぶよりも先に、歩いて逃げようとします。彼らは、非常に食性が広く、腐敗したものであれば何でも餌にするため、発生源が多岐にわたります。生ゴミはもちろんのこと、排水口のヘドロ、動物のフンや死骸など、あらゆる場所から発生する、最も不潔なコバエの一つです。これらの虫と、本物の「チョウバエ」との見分け方は、その「見た目」と「動き」にあります。チョウバエは、体が毛深く、静止している時に翅を広げてハート型になるのが最大の特徴です。そして、動きは非常に鈍く、壁に張り付いていることがほとんどです。もし、あなたを悩ませているコバエが、細長くて俊敏に飛び回るならキノコバエ、すばしっこく歩き回るならノミバエ、そして壁に張り付いてじっとしているならチョウバエ、というように、その行動をよく観察することで、本当の敵の正体を見極めることができるのです。