地方の古民家や築年数の経った木造住宅ではヤモリとゴキブリが共生している光景は決して珍しいものではありません。なぜ古い家にはこの両者が集まりやすいのでしょうか。その理由は日本家屋特有の構造と環境にあります。まず古い家屋は「隙間」が多いのが特徴です。ふすまや障子、雨戸の戸袋、屋根裏、縁の下など外部とつながる空間が無数に存在します。これは通気性を良くして湿気を防ぐための知恵でしたが同時に虫や小動物にとっては自由に出入りできるパスポートとなります。次に「湿気と暗がり」です。木材や土壁は適度な湿度を保ちやすくゴキブリにとっては繁殖に最適な環境を提供します。そしてゴキブリが増えればそれを餌とするヤモリも自然と集まってきます。さらに古い家屋周辺には庭や畑があることが多く豊かな植生が昆虫の多様性を支えています。家の外には蛾や羽虫が集まる外灯があり家の内には食べこぼしや有機物がある。この豊富な食料リソースが食物連鎖の基盤となっています。また現代の住宅のように密閉性が高くないため薬剤を使用しても成分が滞留しにくく燻煙剤などの効果が限定的になることも虫が定着しやすい一因です。しかし昔の人々はこれを「不衛生」として排除するのではなくある種の共存関係として受け入れてきました。ヤモリが「家守」として愛された背景にはこうした日本家屋の環境の中で人間と害虫と益獣が一つ屋根の下でバランスを取りながら生きてきた歴史があるのです。もちろん現代の衛生観念では許容しがたい部分もありますが古い家に住むということはこの生態系の一部になることでもあります。リフォームや断熱改修で隙間を塞げば彼らの姿は減りますがその味わい深い家の雰囲気と共に小さな同居人たちも姿を消していくことになるのです。彼らの存在は日本の住環境の変化を映し出す鏡のようなものなのかもしれません。
古い日本家屋でヤモリとゴキブリが共生する深い理由