新築のマンションに引っ越してきて半年が過ぎた頃でした。真新しい壁紙、近代的なキッチン。快適な生活が永遠に続くと信じていた私の目の前に、それは現れました。壁に、何やら白い粉のようなものが付いているのです。目を凝らしてよく見ると、その粉は、ゆっくりと動いていました。体長一ミリほどの、白くて細長い虫の大群だったのです。私は声にならない悲鳴を上げました。清潔にしているはずの我が家に、なぜこんなものが。その日から、私と見えない敵との戦いが始まりました。インターネットで調べると、その虫の正体は「チャタテムシ」で、新築の家ではコンクリートの水分が原因で大発生することがあると知りました。原因は不潔さではなかったことに少しだけ安堵しましたが、目の前の現実が消えるわけではありません。私はまず、薬局で燻煙タイプの殺虫剤を買い込み、家中のドアを閉め切って使用しました。翌日、床には無数の小さな死骸が落ちており、これで一網打尽にできたと信じました。しかし、その期待は数週間で裏切られます。再び、壁に白い影が動き始めたのです。燻煙剤では、壁の内部や卵には効果がなかったのかもしれません。私は戦略を変えることにしました。薬に頼るのではなく、彼らが生きられない環境を作るのです。その日から、私は換気の鬼と化しました。朝起きたらまず全ての窓を開け、仕事から帰ってもまた窓を開ける。除湿機は二十四時間フル稼働させ、押し入れやクローゼットの扉は常に少し開けておくようにしました。壁を見つけるたびに、アルコールスプレーを吹きかけては拭き取るという地道な作業も続けました。効果はすぐには現れませんでした。しかし、数か月が過ぎた頃、ふと気づくと、壁を動く白い影を見かけることがほとんどなくなっていたのです。コンクリートの水分が抜け、私の執念の換気と除湿が功を奏したのでしょう。この戦いを通じて、私は学びました。害虫対策の基本は、化学の力に頼るだけでなく、その生き物の生態を理解し、その弱点を突くことなのだと。
我が家の白い虫との戦い!ある日突然現れた訪問者